/* 20211016: Need to repair */

Q27 デブリは宇宙エレベーターにとってどれぐらい脅威なのでしょうか。

A27 かなりの脅威ではありますが、対処可能です。

「宇宙デブリ問題も解決するのでしょうか?」でも説明したように、赤道上に10万キロメートルもの長さで伸びる宇宙エレベーターのケーブルには、地球を周回しているほぼすべての物体が衝突する可能性があります。そのため、人工衛星や大きさが10センチメートル以上のスペースデブリなどの軌道がわかっている物体については、衝突を避ける操作をします。

しかし、大きさが10センチメートルより小さいスペースデブリについては、軌道がわかっていないので、避けようがありません。小さなスペースデブリは、宇宙エレベーターのケーブルやクライマーに衝突する可能性があります。大きさは10センチメートル以下と小さくても、大きな運動エネルギーがあるので、衝突すればケーブルやクライマーが損傷するかもしれません。しかも、スペースデブリは、小さいほど数が多くなる傾向があります。ケーブルやクライマーには、スペースデブリと衝突することを前提にして、対策をしておかなければなりません。

クライマーは国際宇宙ステーションと同様の防護で十分
ケーブルについては、たとえスペースデブリが衝突しても、ケーブルが破断しないよう、慎重に設計されます。スペースデブリが衝突すると、ケーブルに小さな穴があくかもしれません。穴があいたとしても、穴が大きくなったり、穴がきっかけとなって裂けたりしなければ、ケーブルの破断にはつながりません。

一部が損傷しても全体の安全性は確保される「フェイルセーフ」の設計が求められます。さらに、ケーブルを定期的に点検し、保守する方法も確立しておかなければなりません。宇宙エレベーターのケーブルは、スペースデブリだけではなく、原子状酸素や宇宙線などでも劣化していくので、補修が必要です。新幹線のドクターイエローのような、ケーブル点検用のクライマーが、定期的に昇降するようになるかもしれません。

クライマーについては、現在の国際宇宙ステーションと同様の防護で十分でしょう。国際宇宙ステーションも、軌道がわかっている大きいスペースデブリは軌道を変えて避けますが、小さいスペースデブリは避けることができません。そのため、衝突しても空気漏れなどの重大な事態にならないように設計されています。特に、国際宇宙ステーションの進行方向にあり、衝突の危険性が高い日本の実験棟「きぼう」には、バンパーが設置されていて、多少の衝突では問題が起きないように工夫されています。宇宙エレベーターのクライマーは、国際宇宙ステーションと比べるとずっと短時間しか宇宙空間にいないので、同じような対策をしておけば十分でしょう。(佐藤 実)

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