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Q16 アースポートはどんな施設になりそうでしょうか。

A16 海上に浮かぶ国際空港のような施設になるでしょう。

宇宙エレベーターの地表側の施設は、赤道上に設置されます。宇宙エレベーターの設置にふさわしい場所には、適当な陸地がないことや、宇宙エレベーターの地表側の施設は移動できることが望ましいことから、その施設は海上に浮かぶ施設になるでしょう。ちなみに、宇宙エレベーターの地表側の施設は、「アースポート」や「海上ターミナル」などと呼ばれていますが、まだ決まった名称がありません。アースポートという呼び方は空港(エアポート)からの連想、海上ターミナルという呼び方は鉄道の終着駅(ターミナル駅)からの連想でしょう。

宇宙エレベーターの地表側の施設に必要な設備は、国際空港に必要な設備とほぼ同じです。国際空港には、航空機の離着陸のための設備、旅客や貨物のための設備、航空機の整備や補給のための設備などがあります。

航空機の離着陸のための設備としては、滑走路や誘導路、管制塔や各種の無線設備などがあります。旅客や貨物のための設備としては、搭乗手続、手荷物の受け渡し、保安検査、税関、出入国や輸出入の管理、検疫のための施設の他に、待合室やラウンジ、レストラン、免税店などがあります。航空機の整備や補給のための設備としては、整備場や格納、燃料タンクなどがあります。これらの設備や施設には、滑走路や燃料タンクといった、クライマーには必要のないものもありますが、宇宙エレベーターの地表側の施設は、ほぼ国際空港と共通したものになるでしょう。

宇宙エレベーターに特有の設備 宇宙エレベーターに特有の設備としては、クライマーの発着場はもちろんのこと、クライマーへの無線電力伝送のための設備、海上を移動するための設備や、ケーブルを保持し、制御するための施設などがあります。クライマーの発着場は、クライマーをケーブルに取り付け、旅客や貨物を積み降ろしします。機能としては鉄道のプラットホームと同じですが、クライマーがケーブルに沿って立っているので、施設に工夫が必要です。クライマーへの無線電力伝送のための設備は、マイクロ波やレーザーといった電磁波でクライマーに電力を送ります。精度よくクライマーに狙いを合わせなければ損失が大きくなってしまうので、天体望遠鏡やアンテナの技術が使われるかもしれません。

海上を移動するための設備は、宇宙エレベーターの地表側の施設全体を、精度よく移動させたり、海流に逆らって同じ所に留まったりできなければなりません。地球深部探査船「ちきゅう」のように、自在に動くスラスター(推進システム)を多数設置することになるでしょう。ケーブルを保持し、制御するための施設は、ケーブルのガイドとケーブルの張力を制御する設備が必要です。

また、陸から隔たった海上に設置されるため、病院が必要かもしれません。将来的には、無重力状態で長く過ごした人たちのための浴場も、人気が出るでしょう。検疫では、宇宙からなにかの病気がやってくるというよりは、地球から病気を持ち出さないことが重要になるかもしれません。
宇宙エレベーターがどこの国にも属さない場合は、少し様子が異なるかもしれません。例えば、税関は不要でしょう。大規模なカジノができたり、タックスヘイブンになったりするかもしれません。そうすると、治安維持のために、民間企業による警察や軍の需要が高まるでしょう。宇宙エレベーターの地表側の施設は、宇宙に出かける人のためだけの施設では終わらないかもしれません。(佐藤 実)

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