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Q28 スペース基地ではどんなことができるのでしょうか。

A28 人類の本格的な宇宙空間への進出を支える活動がされるでしょう。

宇宙エレベーターは、地表と宇宙とを結ぶ宇宙輸送機関としての機能だけでなく、宇宙空間での人類の活動拠点としての機能も担います。宇宙エレベーターにおける活動拠点としては、静止軌道ステーションとケーブルに吊り下げる施設の2つを考えることができます。
静止軌道ステーションは、宇宙エレベーターの中核となる施設です。静止軌道高度では無重力状態になるので、ケーブルに荷重をかけることなく大きな施設を設置することができます。静止軌道高度以外のところでは、地球側でも宇宙側でも、静止軌道高度から離れるにしたがって大きな重力を感じるようになります。このような高度に施設を設置するには、ケーブルに吊り下げることになります。

初期の宇宙エレベーターでは、ケーブルに大きな荷重をかけることはできないので、ケーブルに吊り下げる施設を常設するのは難しいでしょう。将来的には、ケーブルの補強が十分進み、大きな荷重をかけることができるようになれば、様々な施設が吊り下げられるようになるかもしれません。

宇宙エレベーターに吊り下げられる恒常的な施設としては、火星や月の重力を模倣した施設や、軌道カタパルトでの宇宙機の発着施設などが考えられます。宇宙エレベーターでは、高度によって感じる重力の大きさが異なるので、火星の重力と同じになる高度では火星の環境を、また、月の重力と同じになる高度では月の環境を、それぞれ模倣することができます。このような高度に設置した施設では、火星や月に向かう人のための訓練や、火星や月で使う機材の試験などをすることができます。テーマパークができて、手軽に火星や月の重力を楽しむことができようになるかもしれません。

また、静止軌道高度のさらに先には、地球の重力から脱出することのできる地球脱出臨界高度や、火星や小惑星に向かうことのできる各天体への到達高度があります。これらの高度まで宇宙機を運び、ケーブルから切り離すだけで、地球を脱出したり、火星や小惑星に到達したりできるエネルギーを宇宙機に与えることができるので、宇宙エレベーターを軌道カタパルトとして使うことができます。これらの高度に施設を設置すれば、太陽系内を飛び回る宇宙機の発着施設として使うことができます。

吊り下げられる施設は火星や月の重力模倣施設や軌道カタパルトの発着施設など
しかし、ケーブルに吊り下げられる施設をたくさん常設するのは、あまり得策とは言えません。吊り下げられた施設はケーブルに荷重をかけるからというだけでなく、クライマーの昇降に支障をきたすからです。たくさんの施設がケーブルに吊り下がっていると、そこをクライマーが通過する度に、吊り下げるための支持機構を切り替えてクライマーを通さなければなりません。これでは、パナマ運河で使われている、水位の差がある水路に船を通すための閘門【こうもん】と同じように、通過に時間と手間がかかります。

ケーブルの途中に設置する施設は、吊り下げて常設するよりも、クライマーのように、必要に応じてケーブル上を移動させて設置し、用が済んだら静止軌道ステーションや海上ターミナルに戻すようにしておいた方がいいかもしれません。

宇宙エレベーターに設置される施設で重要なのは、なんといっても静止軌道ステーションです。静止軌道高度では無重力状態になるので、どんなに重たいものでもケーブルに荷重をかけることがありません。宇宙エレベーターを使って資材を運び上げれば、大規模で恒常的な施設を設置することができます。

ホテルや娯楽施設、病院といったすでに地表にある施設でも、宇宙空間に設置することで、より付加価値が高められる施設が、たくさん造られるはずです。そのような施設では、宇宙空間や無重力状態ならではの楽しみや、経験をさせてくれるとこでしょう。しかし、人類にとっての宇宙エレベーターの意義は、そのような既存の価値を多少高めることよりも、まったく新しい価値をつくることにあります。

宇宙エレベーターは、人類の本格的な宇宙進出のためのゲートウェイ(入り口)として機能します。静止軌道ステーションは、その拠点になります。無重力状態なので、地上に比べると、大きな宇宙船を組み立てるのも容易です。組み立てた大型の宇宙船を、重力の大きな地上から打ち上げる必要もありません。静止軌道ステーションから地球脱出臨界高度まで持ち上げるだけで、地球の重力の影響から逃れることができます。

軌道カタパルトだけでは、残念ながら太陽系を脱出することはできませんが、宇宙船のロケットを使えば太陽系を脱出し、恒星間空間に向かうことも可能です。ロケットで使う推進剤は、地上や小惑星などから運ぶことで、潤沢【じゅんたく】に用意することができます。人類の活動の場は、太陽系から、やがて銀河を超えて広がっていくでしょう。静止軌道ステーションは、その転換点となる宇宙への足掛かりの第一歩なのです。(佐藤 実)

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