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Q24 宇宙エレベーターに、人工衛星が衝突しそうになったら、打ち落とせますか?

A24 宇宙エレベーターは赤道上にあって、10万kmの高さにまでそびえています。

そして、地球を回るすべての人工衛星は、少しずつ軌道を変えながら、周回の都度、必ず赤道を通ります。その結果、あらゆる人工衛星は遅かれ早かれ、必ず宇宙エレベーターに衝突します。したがって、それを打ち落とせなかったら、宇宙エレベーターの建設は大変危険で、事実上不可能と言えます。そして、私は、宇宙条約上、衝突しかかっている人工衛星を打ち落とす事は許される(つまり、打ち落としても所有者から損害賠償請求を受けたりはしない)と考えています。

宇宙空間で人工衛星が、他のものに衝突して被害を与えた場合、どの範囲で損害賠償の請求を行いうるかを、「国連宇宙損害賠償条約」が定めています。同条約によれば、人工衛星の打ち上げ国は、地表に被害を与えた場合には無過失責任を負うのに対し、他の宇宙物体(space object)に被害を与えた場合には、過失責任を負うと定めています。

例えば、2009年2月に、米国の携帯電話会社の通信衛星と、ロシアの軍事衛星が衝突するという事件がありましたが、どちらも宇宙物体であり、どちらかに故意、過失があって衝突したわけではないので、損害賠償という問題は起こりませんでした。これに対して、例えば、衛星が落下してきて東京スカイツリーに衝突したら、無過失責任ですから、スカイツリーとしては、衛星の打ち上げ国に無条件で損害賠償請求をすることができます。 同条約は、宇宙物体とは、地上から打ち上げた物だと定めています。宇宙エレベーターは、スカイツリーに比べて少々背が高いですが、スカイツリーと同様に地表の定着物であって、打ち上げ物ではありません。したがって、宇宙エレベーターに衛星が衝突して、損害が発生したら、スカイツリーの場合同様、当然に損害賠償請求をすることができます。

ぶつかってきた人工衛星を打ち落としても問題にはならない
国連宇宙損害賠償条約は、ぶつかった後での損害賠償のことしか定めていないのですが、常識的に考えて、損害賠償請求権を有している以上、ぶつかるのを排除する権利は認められます。例えば、あなたが自転車をぶつけられて怪我をしたら、自転車の持ち主に損害賠償を請求できます。その場合、被害は賠償するから、ぶつけられることは我慢しろ、なんて言うことはあり得ません。怪我をしないように自転車をはじき飛ばしても、非難されないはずです。それと同じように、宇宙エレベーターも、ぶつかってきた人工衛星を打ち落としても問題にはならないはずです。

もっとも、実際問題として、その前に宇宙エレベーターが出現すると、人工衛星がそばに来たチャンスにそれを捕まえ、修理し、あるいはバッテリーを交換してやることにより、人工衛星の寿命を飛躍的に延ばすことが可能になるはずです。宇宙エレベーターというアイデアをきちんと理論立てた形で最初に研究した米国のピアソン(Jerome Pearson)は、テザー衛星(Tether satellite)という技術を使って、人工衛星どころか、スペースデブリまでも捕まえて回収するということを提唱しています。(甲斐 素直)

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