/* 20211016: Need to repair */

Q20 宇宙エレベーターに乗っている間どうやって過ごすことになりますか?

A20 のんびり宇宙の旅をお楽しみください。

宇宙エレベーターでの旅は、客船でのクルーズと同じように、ゆったりと流れる時間を楽しむことができます。客船のクルーズには、一夜だけの短いコースから、世界一周のような長いコースまで、いろいろ用意されています。宇宙エレベーターでも、数百キロメートルの低軌道高度、3万6000キロメートルの静止軌道高度、さらにその先の地球脱出臨界高度や火星到達高度など、目的の高度によって所要時間は異なります。いずれにしても、「なぜ低コストで低エネルギーなのでしょうか?」でも説明したように、数分間ほどで宇宙空間に出てしまう打ち上げロケットとは違い、クライマーでは、低軌道高度まででも数時間、静止軌道高度までだと数日間かかります。

宇宙エレベーターでの旅の所要時間は、クライマーの駆動【くどう】方式によります。初期の宇宙エレベーターでは、ケーブルを挟んだ車輪を回転させることで、摩擦力によってケーブルを昇降する方式がとられるでしょう。この摩擦力による方式は、駆動軸の潤滑や、ケーブルと車輪の摩耗など、解決しなければならない課題はありますが、現在の技術の延長線上にあります。

ただし、ケーブルと車輪が接触しているので、あまり高速にはできません。レールと車輪が接触して走行する高速鉄道では、試験走行でフランスのTGVが時速500キロメートルを超える速さを記録してはいますが、営業運転ではだいたい時速300キロメートルほどです。ケーブルと車輪が接触して昇降するクライマーも、時速500キロメートルを超えるのは難しいでしょう。クライマーの速さの想定としては、時速200キロメートルほどが多いようです。

レールと車輪が接触して走行する鉄道よりも、軌道上を浮上して走行するリニアモーターカーの方が速くできるように、宇宙エレベーターでも、ケーブルとクライマーが接触しないリニアモーター方式をとると、もっと速くできるかもしれません。しかし、リニアモーター方式のクライマーは、技術的には未知数です。

低軌道高度までなら数時間、静止軌道高度までだと1週間以上

クライマーの速さが時速200キロメートルだとすると、低軌道高度まで数時間、静止軌道高度までだと1週間以上かかります。客船のクルーズにたとえると、低軌道高度が湾内を巡るワンデイクルーズやワンナイトクルーズに、静止軌道高度が国内や海外を巡る1、2週間の周遊クルーズに相当します。低軌道高度までならば、外の景色を眺めているうちに着いてしまうくらいの時間なので、軽い食事や飲み物が出る程度でも十分でしょう。食事をメインにした、ディナークルーズのような企画も現れるかもしれません。しかし、静止軌道高度まで行く場合は、乗客を退屈させない工夫がいろいろとされるでしょう。

静止軌道ステーションに向かうクライマーには、豪華客船並みの設備とエンターテインメントが用意されるでしょう。レストランやバーはもちろん、スポーツジムや映画館などが、充実した機内の時間を演出します。低重力を利用したクライマー内限定のショーなども上演され、乗客を楽しませてくれるはずです。もちろん、ラウンジで静かに地球の姿や星空を眺めるのもいいでしょう。観光での利用なら楽しみが尽きないでしょうが、出張での利用には向かないかもしれませんね。(佐藤 実)

TOPへ