第56回日本SF大会「ドンブラコンLL」出展記

表題の通り、2017年8月26日・27日と、静岡県コンベンションセンター「グランシップ」で行われた、第56回日本SF大会にゲスト出展者として参加してきました。(JSEA理事 下條善史)

今回は、一般展示の宇宙関連展示ということで、静岡大学のSTARSプロジェクト紹介のお隣で、宇宙エレベーターの紹介展示を行いました。

さすがにSF大会の参加者だけあって、宇宙エレベーターの基本的な部分はほとんどの方がご存知のようで、「これは何?」というような質問はほとんどなく、むしろ「いつ頃できそう?」「今どこまで行ってる?」というような関心の方が多かったように思いました。一方、今世間では流行りであるだろう「宇宙ビジネス」の視点で捉えるような方はほとんどいなかったように思います。みなさん、フィクションの道具としての認識が強いのでしょうか。「楽園の泉」「星ぼしに架ける橋」といったキーワードへのつながりがメインストリームだったように思い、一般の方たちと比べると、関心の方向の明らかな違いが興味深かったところでした。失礼な偏見なのかもしれませんが、まったく宇宙エレベーターの話なんかしそうにないように見える年配のご婦人の参加者の方に、全く説明なしに静止衛星軌道だのホーマン遷移軌道などの用語を持ち出して説明しても、きっちり理解していただけたというのが、ものすごく驚きの体験でした。すいません、SF大会ナメてました。

さて、今回の展示でのハイライトのひとつは、「こち亀」秋本治先生の訪問でした。
今年の星雲賞コミック部門では、少年ジャンプで40年以上連載を続けておられ、今年連載終了された「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が受賞されたのですが、その長い連載史の中には、宇宙エレベーターを取り上げた回もあったんですね。そんなこともあり、我々も宇宙エレベーターの知名度向上に多大に貢献してくださった旨感謝の意味を込めて、その掲載回の解説パネルを用意して展示しておりました。そこにスタッフの方が、星雲賞の受賞スピーチに会場を訪れておられた秋本先生を連れてきてくださって、突然のブース訪問となったわけです。

ほんの一言二言の短い会話でしたが、我々をねぎらってくださって、パネルにサインまでしていただけて、感激の瞬間でした。

実は二日目にはもうひとつのハイライトもありました。

このSF大会では、以前から数年にわたってSFイラストレーターの加藤直之先生が、会場に設営した臨時のアトリエで、作品制作の現場をリアルに実演してくださるイベントが行われていたのですが、ちょうど我々のブースの隣が、そのアトリエだったのです。銀河英雄伝説や宇宙戦艦ヤマトなどの比較的一般向け作品でも有名な方だけに、我々も緊張感と興味を持ってイラスト制作を、展示の合間に眺めさせていただいていたのですが、その加藤先生がある時ふと手を休めて、こちらのブースを訪ねてこられました。で、そのまま宇宙エレベーターについての説明を熱心に聞いていかれたのでした。話の中で、先生自身が宇宙エレベーターをイラストの中にどのように表現するかについて、さまざまに試行された経緯なども話しておられました。どうやら今後の作品の中にも宇宙エレベーターを登場させる機会があるのではないかと考えておられるように見受けられたのですが、どうなんでしょうね。

結局、宇宙エレベーターを中心にした話も弾んで、我々がブースに置いていた宇宙エレベーター関連書籍を寄贈させていただきましたところ、サインまで求められてしまいました。寄贈した書籍の著者である本協会フェローでもある東海大学の佐藤実先生が、骨の髄まで緊張しながらサインをしておられたのが印象に残りました。

そんな感じで、今回のSF大会出展は大きな印象を残して無事終えることができました。参加された皆さんに、宇宙エレベーターの現状はどのように映ったのでしょうか。みなさん、お疲れ様でした。