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Q04 宇宙エレベーターはなぜ低コストで、低エネルギーなのでしょうか?

A04 宇宙エレベーターではクライマーが時間をかけてケーブルをゆっくり昇降することができるからです。

はじめに、エネルギーについて、おさらいをしておきましょう。エネルギーとは、力学的な仕事をすることのできる能力のことで、力学的な仕事とは、物体に力を働かせて動かしたときに、その力に移動距離を掛けた量のことです。つまり、物体に力を働かせて動かすには仕事が必要で、仕事をされた物体はその分のエネルギーを持つことになります。

例えば、止まっている物体を動かして、ある速さにするには、その物体に仕事をしなければなりません。仕事をされた結果、ある速さになった物体には、その分だけのエネルギーがあることになります。これを、「運動エネルキー」といいます。運動エネルギーは、物体の質量と速さで決まります。

また、低い位置にある物体を、重力に逆らって高い位置に持ち上げるには、その物体に仕事をしなければなりません。仕事をされた結果、高い位置にある物体には、その分だけエネルギーがあることになります。これを、「位置エネルギー」といいます。位置エネルギーは、物体の質量と高さ、重力の大きさで決まります。

地球を周回する軌道への打ち上げとは、軌道に乗せたい物体に、必要な運動エネルギーと位置エネルギーを与えることに他なりません。地球周回軌道に物体を打ち上げるときには、その物体に仕事をして、目標とする速度と高度を与えます。その仕事をしているのが、ロケットです。ある軌道に物体を乗せるために必要なエネルギーの量は、決まっています。エネルギー損失がなければ、どのような方法で軌道に乗せるかにはよりません。その意味では、エネルギー損失がなければ、ロケットでも宇宙エレベーターでも同じ、ということになります。

仕事率が小さいので扱いやすく、安全
ロケットと宇宙エレベーターで異なるのは、エネルギーではなく、仕事率です。仕事率とは、一定の時間間隔にした仕事のことです。エネルギーの単位はジュール(J)で、仕事率の単位はワット(W)です。ワットという単位は、電気製品などでおなじみの、電力の単位でもあります。ジュールは、電力量の単位でもあります。

1ワットの電力を1秒間使うと、1ジュールのエネルギーを使ったことになります。ちなみに、電気料金の請求書にあるキロワットアワー(kWh)も電力量、つまり、エネルギーの単位なので、私たちが電力会社には支払っているのは、使ったエネルギーに対する対価ということになります。

ある軌道に物体を乗せるために必要なエネルギーの量はロケットでも宇宙エレベーターでも同じですが、仕事率は、短い時間で打ち上げるロケットの方が大きく、長い時間をかける宇宙エレベーターの方が小さくなります。打ち上げロケットで宇宙に昇るために必要な時間は数分間ほどですが、宇宙エレベーターでは、クライマーの速さによりますが、数時間から数日間かかります。

打ち上げロケットは、重力に引かれて地表に戻ってしまう前に、軌道に乗るために必要なエネルギーを与えてしまわなければならないのに対して、宇宙エレベーターでは、ケーブルをつかんでいるクライマーは、地表に落ちる心配をせずに、ゆっくりとエネルギーを与えていけばいいからです。エネルギーの総量が同じても、仕事率が小さい方が制御しやすく、損失を小さくすることができます。

100ワットの電球と1ワットの豆電球では、どちらが扱いやすいかを思い浮かべていただければ、想像できるのではないでしょうか。同じように、仕事率が大きいロケットよりも、仕事率が小さい宇宙エレベーターの方が扱いやすく、結果的に安全で安くすることができるのです。

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